オタクの備忘録

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Wake Up, Girls!の楽曲、Polarisについての話

Polaris

歌:Wake Up, Girls!

作詞:Wake Up, Girls!

作曲・編曲:田中秀和MONACA

 

ワグナーであれば言わずと知れたWUGの代表曲、WUGの集大成。でもワグナーじゃない層にはあまり知られてないと思われる。音源にして5分8秒のこの楽曲には、無数の物語と、文脈と、想い出と、凄まじい情報量が込められています。そのひとつに「WUGメンバー自身が作詞している」という事があり、作詞にまつわるエピソードがリーディングライブ(朗読劇)の形で披露されておりました。2018年10月6日・7日のファイナルツアー大阪岸和田公演のことです。あれからちょうど1年経った今日この機会に、改めてPolarisという楽曲について振り返ってみようと思います。

 

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↑のちのライブで物販特典として配られた複製台本。脚本は吉岡茉祐。本記事はこの本を参考に書いていきます。

 

独自の解釈になりますが、大きく4つの項目「歌詞とパート割りについて」「アニメ本編での位置づけについて」「振り付けとフォーメーションについて」「各地のライブで歌われてきたことについて」に分けて書いていきます。

 

1.歌詞とパート割りについて

私個人の意見としては、Polarisの持つ情報の約4割を占めるのが歌詞関係の話です。まずは作詞がWUG自身であること、そしてパート分けもメンバー同士が相談して決めたこと。これに尽きます。具体的には、影ナレや舞台の脚本などを書いてきた吉岡さんが、7人の意見をまとめ上げたと言われています。歌詞を練り始めたのは2017年6月「Anisong World Matsuri」にてロサンゼルスに向かう飛行機の中だったという話。アニメWUG新章の放送を約3か月後に控えた時期であります。

 

Polaris北極星を意味するこのタイトルは曲のテーマとして吉岡さん・田中さんの両名から出た案であり、これを元に7人が各フレーズを考えたとのこと。「1年を通して北の空に光り続ける道標」であり、近くには北斗七星もあるという。星空や星座、転じてライブ会場のサイリウムもイメージされているとのこと。「星座は誰が見つけて、誰が繋げたんだろう?」などと言われるように、人と人との繋がりもテーマに入っています。

 

こういったキラキラしたイメージを持ちながら、実際の歌詞、1番Aメロからサビ前辺りまではWUGの出自にも触れるかなり重い言葉も入ってきます。特に重要なのは永野さん・奥野さんの担当パートでしょうか。「君と見た景色さえ黒く塗りつぶされて」「楽しいも嬉しいも波が飲みこむの」この2人が東北地方出身であるということを知っているだけで聴こえ方がかなり違ってきます。「不安とかイライラが闇を作り出す」を歌う山下さんは、過去を振り返ったときに辛かったこと、不安を抱えていた時期、そういったものをどうしても思い出してしまうという面も語られていました。これは意外だと思った人も多いことでしょう。一方、明るい歌詞を担当しているメンバーには田中さん・高木さんがいます。「信じた数だけ大きくなる 繋がればひとつの絵になる」「確かめるように鳴らすファンファーレ」など。この2人の明るい声で前向きに引っ張っていってほしいという思いも込められているとか。

 

2.アニメ本編での位置づけについて

アニメWake Up, Girls!作品内では「新章」の最終話にて披露されています。アニメとしてはシリーズ最終作となった新章の一番最後、クライマックスを締めくくる楽曲になっています。劇中での作曲は早坂相、そして作詞は現実と同じくWake Up, Girls!です。

 

劇場版七人のアイドルから始まって、テレビシリーズ1期、続劇場版、そして新章と続いてきた本作。楽曲とライブシーンで言えば、デビューライブ勾当台公園でのタチアガレ!から始まり、アイドルの祭典I-1アリーナにおける7 Girls WarBeyond the Bottomを経て、全国ツアー千秋楽仙台公演でのPolarisに到達します。例に挙げたこの4曲に限って見ても、作詞作曲者がTwinkle→早坂相→サファイア麗子と移ってきて、最後のPolarisはWUGが作詞です。正に成長の軌跡。形を変え脈々と受け継がれてきた魂が楽曲に宿っているのです。雪降りの仙台で歌われたタチアガレから、再び雪の降る屋外ステージに帰ってきたというのも注目すべきところ。

 

劇中ではWUGだけでなく全国各地のアイドルも揃ってこの曲を歌っています。日本全国を繋ぐのも「星座」というテーマのもとに通じています。リアルではアニサマで差し込まれたメッセージ映像がこれに近いか。これほどまでに「WUG色が強い」楽曲でありながら、外にひろがる道も持っているのがPolarisの面白いところです。

 

3.振り付けとフォーメーションについて

振り付け担当は永野さん。地下鉄ラビリンスやTUNAGOなどの振りを作ってきた彼女にとっても集大成と言える楽曲です。過去の楽曲に影響を受けた振り付けもところどころに見られます。

 

歌い出しのフォーメーションが作る北斗七星は、この星座が北極星を見つける目印になることから、ステージから客席の方向を指し示す→WUGにとっての道標たるPolarisがワグナーであるというメッセージが込められています。歌う前から既に物語があるという凄まじい構成。

 

メンバー同士が向き合う箇所も多いのですが、特に2番サビの後に全員が一度輪になるところ。曲中でここだけは完全に閉じた輪をつくり、「7人だけの世界」になっています。常にファンサービスを忘れない彼女たちがこの瞬間だけはメンバーだけを見たい気持ち、この構成に泣けます。

 

4.各地のライブで歌われてきたことについて

2018年から2019年のファイナルライブにかけて、ほぼ毎回と言っていい密度でPolarisが繰り返し歌われてきました。それ自体による物語もこの曲に乗っています。

 

強い想いの込められた楽曲ですが、ライブ初披露までには少し時間がありました。

アニメ本編の最終話が2018年1月放送、そしてPolarisのライブ披露は4月1日のWUG5周年記念ライブでした。17年12月のWUGフェス、クリスマスのアニメJAM、2月のわぐりす(ここでスキノスキルを先に披露している)などいくつかのライブがあったものの、Polarisは5周年ライブまで温存していました。最初は仙台で披露したかったという強い想いが感じられます。

 

その次は5月のグリフェス。ここではRun Girls, Run!の3人も合わせた10人での歌唱がありました。(そして、結果的にこの10人での歌唱はこれが最後になるという。)6月の舞台でも、Polarisが「2018年現在のWUGを象徴する」という大きな意味を持ちました。

 

解散発表を経て迎えた7月のファイナルツアーパート1。最初の市原公演にて「まゆしぃソロでブレードを赤くする」人がいるのを見たワグナー達が、2箇所目の座間公演で赤変えを増やした結果それがまゆしぃの目に止まり、3箇所目の大宮公演にて完成するという流れがありました。続くアニサマにもこのブレード技が持ち込まれ、「白から赤に変えた人だけがワグナーだと分かる」という熱いメッセージになりました。一方11月のアニマックスでは会場全体が赤く染まるという更なる展開も。

 

10月に始まったファイナルツアーパート2、岸和田公演ではリーディングライブにてPolaris製作秘話を披露。またこの時はヘッドセット歌唱・両手振りが見られる貴重な機会となりました。12月の盛岡公演では再びこの曲を東北へ。横須賀公演とアニメJAMでは、アニメと同じクリスマスに歌うことを1年越しに達成。ファイナルツアーパート3、各地の公演を進める中で「肩組み」が仕上がっていったのも忘れられないでしょう。最初は一部のワグナーだけだったのが、最後には会場のほとんどが繋がるまでになりました。

 

セトリをWUG自身が組んでいたという終盤において、年間を通してPolarisが最多披露楽曲になったのもこの曲に込められた想いの強さを物語っているでしょう。

 

まとめ

まだまだ書ききれないことがたくさんありますが、とにかく「Polarisはスゴい」ということを改めて認識すべきでしょう。広い世界を見渡してもこんなに情報量の多い楽曲もなかなかないと思います。特に初めてこの曲を聴くという人には、上記のような裏話もしっかり伝えていきたいですね。